雨に強いまち尾鷲は本当か?

 尾鷲の年間降水量は、私が小学生のころは全国1位でした。

 現在では、屋久島(山岳部では年に1万mmも降っているとも)を筆頭に、大台ケ原(日出ヶ岳)、尾鷲市(年平均4000mm程度)、宮崎県えびの高原(1993年の年間降水量8511mmは日本記録)あたりが、日本における多雨地域になります。人が常時住んでいる地域や人口密度を考えると、やはり尾鷲市の雨は尋常ではありません。

 確かに、「雨に強いまち尾鷲」には違いありませんが、1971年(S46)9月の三重県南部集中豪雨では、賀田や古江で山津波が発生し、両地区で26名もの死者を出しました。その惨状は、賀田地区で行われた尾鷲市総合防災訓練の会場で見た当時の災害記録冊子でも記憶に新しいです。

 また、戦後からの豪雨による災害記録や被災を調べてみると、1948年(S23)11月の台風34号、1950年(S25)9月の台風28号、1953年(S28)9月の台風13号、1954年(S29)6月の低気圧、9月の台風14号、1956年(S31)10月の低気圧、1958年(S33)8月の台風17号、1959年(S34)8月の台風7号、1959年(S34)9月の台風15号(伊勢湾台風)、1960年(S36)10月の低気圧と前線、1961年(S36)6月の梅雨前線、1961年(S36)9月の台風18号(室戸第2台風)、1967年(S42)10月の台風34号、1971年(S46)9月の前線(三重県南部集中豪雨)、1971年(S46)9月の台風29号、1982年(S57)8月の台風10号と前線、1990年(H2)9月の台風19号と前線、1994年(H6)9月の台風26号、1998年(H10)9月の台風7号と8号、2004年(H16)9月の台風21号と前線(三重県豪雨災害)、2008年(H20)9月の台風13号と前線など、近年の被害は少ないですが、この地域は常に雨との闘いを強いられています。

 しかし、この「雨に強い」という自負が、実は逆に弊害となっているのではいないのかと、危惧していることがあります。人口も3万人を超え、若い世代が多く暮らしていた時代とは違い、今の尾鷲は2万人弱の人口と、55歳以上が1万人も生活している超高齢化社会になりつつあります。減災の知識では、高齢者には知恵や経験が豊富であるのに対して、災害における瞬発力や、被災後における体力は反比例してしまいます。その現実の中で、この尾鷲市には、洪水(水害)ハザードマップがないのです。津波ハザードマップは、内容もスケールも素晴らしいマップがあるいのですが、豪雨による洪水を想定したマップはありません。

 三重県における洪水ハザードマップの公表状況を見ると、県内10自治体しか公表されておらず、そのうち8自治体がインターネットでの公開をしております。さらに、東紀州で見ると、紀宝町と御浜町が公開しています。また、尾鷲市でも可能性が高い内水氾濫によるハザードマップは、県内でも2自治体しか公開されていませんでした(内水氾濫とは、下水溝や排水溝が氾濫すること)。ちなみに、土砂災害ハザードマップは、尾鷲市にもありますが、これは水害を想定するには不都合があります。

 私は、平成20年3月の一般質問で、水害(洪水)ハザードマップの必要性を訴えたのですが(伊藤元市長のときにも質問しましたが)、「そのような検討はない」とのことでした。しかし、毎年のように洪水や内水による氾濫は発生しており、少なくとも被害が発生しています。その都度、尾鷲市役所を初め、尾鷲消防署や各地の消防団、各自治会、ボランティアなどが被災対応していますが、同じ場所や地区で発生することが多いです。

 「事前に災害を意識し、市民にも対応してもらえることはあるのでは?」

 これが私の考えで、それまで市職員が中心に配達・回収していた土のうは、土のうステーションという形で、市民による自主防災として前進させるきっかけをつくりました。まだまだ未整備の地区も多いですが、水害ハザードマップがあれば、このような土のうステーションの設置場所も明記されるので、誰でも災害対応が可能となります。また、公開(インターネット公開やマップの配布)することで、市民や尾鷲を訪れる人への減災意識を啓発するきっかけにもなります。

 検討するにとどまるマップの作成も、私は市役所職員ばかりに汗をかけとは考えていません。被害状況を一番よく知っている地域住民からの声を集めたり、減災学習の一環で教育施設にも協力を願いでたり、自主防災会や自治会、市民活動団体など、それこそ尾鷲に住む市民の声の集約として、水害ハザードマップにまとめることが可能ではないでしょうか?何よりも、より多くの市民でつくることで、減災の啓発にも繋がります。このときに、避難経路などで高齢者や障がい者などにも配慮したマップにすれば、より効果があるでしょう。

 ハザードマップの効果は、すでにいくつかの自治体でも検証されており、例えば、1998年(H10)8月の福島県郡山市を中心とした豪雨災害では、あらかじめ洪水ハザードマップを見ていた人と見ていなかった人で、避難行動を開始する時間に約1時間の差がみられたという結果があります。また、2004年(H16)10月の兵庫県豊岡市の豪雨災害でも、洪水ハザードマップのおかげで、被災の規模の大きさと比較して、住民の避難や行政の対応が進んだという話も聞いています。

 今年は、伊勢湾台風から50年、三重県豪雨災害から5年という節目の年です。各地で啓発イベントが開催されますが、三重県豪雨災害に関しては、あまり耳にはしません。あのときは、旧海山町で約2000戸が床上浸水し、尾鷲市や旧紀伊長島町でも、百数件の浸水被害を受けました。遠い災害の検証も必要ですが、もっとも近い被災がお座なりになっているのではとも感じます。しかし、何もしないよりはしたほうがいいので、ぜひ声に出して取り組んでいきたいとも考えています。

 その初めの1歩として、私のブログからも、水害ハザードマップの必要性を考えるきっかけになればと感じています。


◆参考URL
 国土交通省ハザードマップポータルサイト
 四日市市の内水氾濫想定区域図
 伊勢湾台風50年事業実行委員会
 尾鷲市 土のう作業を住民へ一任(2008年10月10日 読売新聞)
 (元)海山町災害ボランティアセンターの活動とその後の防災・減災活動
by owase874 | 2009-06-30 13:46 | 防災とまちづくり


市民活動の延長線上に、市民目線の政治があると考えています。


by kumano874

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当ブログに来ていただきありがとうございます。私が政治に関心をもったのは、災害現場でボランティアとして活動しているときに、どうしても市民活動・NPO活動だけでは届かない声があると感じてからです。1995年の、阪神淡路大震災のときです。それ以降、政策提言できる市民活動を合言葉に、さまざまなことを実践しています(市民派向けのブログもあります。こちらCafe_CReAM モノ語り)。


これまでの思いが実現したのが、2006年11月から、2期6年半在職した尾鷲市議会議員でした。3期目の挑戦には苦杯しましたが、貴重な実体験をさせていただき、条例の制定を中心にした議会改革や、市民活動で培った政策提言を直接できる立場として、負託の重さを実感することができました。

また、尾鷲市議として負託をいただいてからは、この地域ではいち早く、議員活動をお知らせする手段の一つとして、このブログを活用しました。当時のことも含め、日々私が何を感じ、何を考えているかを綴る活動報告にもなっています。なお、2014年5月1日からは、三重県熊野市議会議員として、あらたな1歩を踏み出します。

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