岩田市長の所信表明を聞く

 本日、第1回定例会の開会が宣言されました。

 議事に従って、岩田市長による所信表明を聞きましたが、今回より、所信表明と議案の提案説明の資料が事前に配布されていました。それまでは、本会議のあとに配布されていたので、こういった配慮はありがたいとともに、もっと早く要求すればよかったとも感じました。なお、資料は行間が開いて見やすくなったばかりか、地名などの難しい漢字には、振り仮名もふってありました。丁寧だなと感じましたが、岩田市長自らが読みあげるからだと気づきました。

 所信表明は、ときの市長の意気込みを示しているので、読み上げる順の早い方から、関心が高いと推測できます。岩田市長においては、水産業や林業、まちづくりの施策が冒頭にくることが多く、教育全般や子育てなどについては、あまりページを割いていない印象です。今回においても、そういった側面に関心を持ちつつ、予算書と照らし合わせながらページを追っていきました。以下に考察しますが、その関心度の順番になっています。

1.組織・機構の見直し
 これも、ときの市長で変わることが多く、伊藤元市長・奥田前市長のときも、組織と機構の改革はありました。市長の色が出る場面でもあり、「木のまち推進課」、「魚まち推進課」などは、岩田市長らしいネーミングだと感じたところです。
 実際には、「市長公室」から財務部門を独立させ、「水産農林課」の業務を分離して、上段の推進課に、「商工観光課」を加えた3課体制に再編しています。岩田市長になってからよく出てくる「6次産業化」をうたっての分離ですが、農商工連携などから生まれた「6次産業」という言葉は、1次産業、2次産業、3次産業の足し算とも掛け算とも言われている造語です。
 しかし、それぞれの産業体系に従事する民間が率先する後方支援であれば納得がいきますが、行政が推進するには無理があるようにも感じています。つまり、「尾鷲市の行政が魚や木を売るの?」という感じです。そもそも民間の仕事を行政がするようになってしまえば、民間力はますます衰退していくように感じます。各推進課の聞こえはよかったのですが、製品開発や販路開拓は、やはり民間がやるべきことではないでしょうか?
 あと、財務部門の独立は、尾鷲市の財政状況や、このところの使いようをみても、歓迎すべき見直しだと感じています。あとは、財務部門がどれだけ市長の思惑にブレーキを掛けたり、アクセルを踏ませたりできるかだろうと考えています。

2.おわせ元気・満足度アップ事業
 このネーミングも、岩田市長らしいと感じました。(所信表明の)2番目にきた施策なので、岩田色を全面に出した施策でしょう。
 この新規事業は以下の7つあって、それぞれの事業予算の総額は、801万5千円になります。これだけの額しかかけられなかったのだと思いますが、これでどれだけの元気度や満足度がアップするのかに注目です。

 ・二枚貝養殖試験事業 131万5千円
 ・食の魅力づくり事業 241万円
 ・おわせみなと産地協議会強化支援事業 20万円
 ・漁村集落再生モデル事業 84万円
 ・食育推進事業 150万円
 ・しろちどり体験事業 105万円
 ・市内水産関連事業紹介事業 70万円
 ・合計 801万5千円

3.水産振興
 水産振興は、お魚市長と言われるだけに、毎回のように上位で取りざたされています。内容は、1次産業に従事する皆さんと行政との連携、新しい取り組みへの着手に始まり、アオリイカとイセエビの増殖礁の実証事業、1次産業への後継者対策事業、漁協合併、古江漁港の3門の防潮扉整備事業、新規事業として「水産基盤ストックマネジメント事業」でした。

 ・水産業費 2億3554万5千円

4.林業振興
 今年度が、林業施策の大幅な変革の年と位置づけています。これは、「市町村森林整備計画」の改正などがあるからで、これにあわせる形で、造林補助メニューも様変わりすると予測しています。

◆市町村がたてる「市町村森林整備計画」
 http://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/sinrin_keikaku/con_5.html
※林野庁の公式サイト(http://www.rinya.maff.go.jp/index.html)より抜粋

 尾鷲市にとっても、市有林の主伐を来年度に控え、今年度は試験伐採をしたのちに、9月には主伐計画の概要が報告されるとのことです。市有林については、大きな関心ごとにもなっているので、まさに市の林業施策を左右する論議をせねばと感じています。
 その他は、緊急雇用創出事業、林業基盤整備事業、林道沿線環境整備事業および林道の改良事業など。

 ・林業費 9772万2千円
 ・山林事業費 6011万6千円
 ・受託造林費 571万3千円
 ・合計 1億6355万1千円

5.農業振興
 農業者戸別所得補償制度、天満地区の中山間地域等直接支払交付金事業および改修工事、改正農地法の責務、農業参入できる環境整備で、NPO法人も入れているのは何かありそう。あと、尾鷲市農業員会というのがありますが、議会からは総務産業常任委員長が自動的に選任されています。しかし、何をしているのかまでは伝わってきていないので、関心を持っています。

 ・農業費 2726万6千円

6.獣害対策
 尾鷲市だけでなく、いまや日本全国で問題となっている獣害対策は、国の施策にまで発展しています。サルが主な対象ですが、尾鷲市ではイノシシやシカもいるので、多面的な支援が必要です。荒れる里山の課題もあるので、直接的な駆除だけでなく、日本の国土を見直すきっかけにしなければなりません。

 ・有害獣害対策事業 624万円

7.海洋深層水事業
 昨年の取水事故が、大きな痛手でした。訴訟に発展していますが、長引くほどに裁判費用がかかります。また、賠償金額も大きいので、顧問弁護士の報酬額も跳ね上がっています。この件で気になったのは、事故の影響で市外への分水量が減少しているとありましたが、利用者が戻ってきていないのは、尾鷲の深層水に見切りをつけたのではないか?です。このため、市長自らトップセールスを行うとありましたが、いままでしてこなかったのでしょうか?
 多段活用型陸上養殖試験事業では、最終年度で1050万円も予算化されていますが、これまでの総額で、どれだけの効果と今後の展開があるのかに関心があります。また、海洋深層水の事業がはじまって5年が経過し、使用料の改定もあるようです。しかし、取水事故の影響で利用者が減少しているなかで、利用者離れに拍車がかかるのではないかという懸念もあります。

 ・海洋深層水推進事業 4269万8千円

8.商工振興
 所信表明でよくでてきますが、割り当て分は非常に少ないです。予算全体でも1.8%しか占めていません。わかりやすくいえば、今回の予算のなかで、清掃工場の煙突改修工事請負費が計上されているのですが、この金額が1億169万3千円です。多少の誤差はありますが、煙突1本に近い予算で、尾鷲市の商工振興は可能なのかと感じてしまいます。
 冒頭に出た尾鷲市のヒット商品であるヤーヤ便ですが、委託料735万円の予算が計上されています(関連する予算はほかにもあるかもしれません)。委託先は、尾鷲観光物産協会ですが、今後も継続していくのかに関心があります。年4回の発送で、1件2万5800円ですが、939名の申込者がいたということなので、単純計算でも2422万6200円の売り上げになっているからです。尾鷲市の広報にもなっているので、宣伝効果もありますが、どこで線引きをするかの検討も必要ではないでしょうか?
 また、魚あら・未利用魚の有効活用システム研究事業ですが、最終年度で945万円が計上されています。平成21年度から取り組んでいる事業なので、こういった委託事業の成果の検証などは、しっかりとしなくてはと関心を持っています。
 ほかには、スタンプ事業、貸付金制度等などを報告。

 ・商工費 1億5756万7千円

9.集客交流
 紙面が2ページに渡っていることから、これも岩田市長が得意とする分野かもしれません。
 海洋深層水温浴活用進化事業も最終年度であり、1050万円が計上されています。「夢古道の湯」が対象ですが、皮肉にも先月末で市内の銭湯が廃業しています。関連性の有無はわかりませんが、集客交流の点で考えると同じです。市有であるというだけで、片方には予算があり、民間には当然ながらありません。行政によって民業を圧迫しているとまでは思いたくありませんが、こういったことは、本当に不幸なことです。
 また、「まちなか」に交流空間を想定していますが、今年に入っても、「まちなか」といえる位置にある店舗の廃業や空き店舗化に歯止めがかかっていません。もはや商店街通りにおいては、空き店舗対策よりも、空き家の廃墟化のほうが問題になりつつあります。本来の集客先である銭湯やボーリング場がなくなり、理由はあるにせよ、どんどんと集客施設が閉店しています。明らかに、行政主導では、まちなかへの集客事業に無理があると感じていますが、民間側にも大きな課題と問題があるでしょう。
 ほかには、おわせ輪内地区まるごと振興協議会、新規事業で「観光交流受入施設現況調査及びウォーキングコース情報発信事業(325万5千円の委託料)」、尾鷲観光物産協会の法人化への取り組み、磯釣り大会などが報告されました。
 集客交流に関しては、尾鷲観光物産協会への委託料も多いと思われますが、予算の総額を調査しきれていません。この委託料についても、かなりの金額がそれぞれの委託先に配分されていますが、どれほどの効果や影響を与えているかの検証も必要です。

10.健康・福祉施策
 これも2ページに渡っていますが、いつも出現は後半です。予算の割合がもっとも大きい事業ですが、ほとんどが国の施策によるもので、尾鷲市独自や尾鷲らしさがあるとはいいがたいです。これは、「尾鷲に住んで、本当にありがたいねえ」という部分がどれだけあるのかです。どうも、国の施策の責任転嫁をしていると感じる部分が多いです。
 子ども・子育て新システム制度、ともに子育てを支えあうまち、安心こども基金、ひとり親家庭への支援、介護保険事業計画の見直し、第2期紀北地域障がい者福祉計画、次世代育成支援行動計画、3種ワクチンの任意接種への助成、成人・高齢者の保健事業などが報告されました。
 とくに、尾鷲の将来を担うであろう周産期医療や福祉に対する施策や、障がい者(児)に対する横断的、多面的な支援センターなど、この分野で率先した施策は見当たりませんでした。

 ・民生費 30億2577万1千円
 ・衛生費 12億7677万5千円

11.地域医療
 尾鷲総合病院に関する報告ですが、眼科の常勤医師の確保、三重大学との連携など簡素に終わりました。

 ・尾鷲総合病院(病院事業会計) 48億6117万3千円

12.環境施策
 国の方針である、一般廃棄物の有料化が暗示されていました。湯水のように清掃工場の改修費を計上しながら、有料化を検討させるのはナンセンスだと感じました。後段にも、ごみ処理施設の広域化の協議を必要としながらも、具体的には内容までに至っていないとあえて明言しています。担当者任せで、トップダウンする気もないのでしょう。自治体では、ごみ処理は大きな施策なので、トップ会談しないでどうするのよ?です。これだけでも、東紀州がまとまっていないと感じます。
 ごみ問題に関しては、尾鷲市廃棄物減量等推進審議会で協議するとありますが、議会としてでしゃばれない領域でもあるので、方針が出てからの議論しかできません。
 その清掃工場の補修工事が2件あるようで、煙突内筒の取替工事で1億169万3千円(新年度予算)、2号炉の耐火物補修工事で3990万円(7号補正)が計上されています。

 ・清掃費 6億9767万6千円

13.防災対策
 古江地区の住民主導型避難体制確立事業、土砂災害相互通報システムネットワークの補完整備においては、引き続き県に予算配分を要望するとし(当初見込みの事業予算が減額されたので)、尾鷲独自で整備する意志はないと確認するに至りました。

 ・防災費 2679万1千円

14.学校教育
 これもいつも後段ででてきます。
 尾鷲中学校での生徒指導研究推進事業及び学習支援事業の継続、小学校での外国語活動ボランティア事業(67万9千円のうち、59万4千円が人件費)の充実においては、ALT事業よりも地域雇用も含めて効果があるのではないかと期待しています。ALT事業では、予算がかかるわりには(992万8千円のうち、734万4千円が人件費)、どれだけの効果があるのか不明です。
 そのほか、幼保小中育ちのリレー事業は市単独で継続、サポートティーチャー活用事業について報告。

 ・教育費 7億1806万4千円

15.学校施設の耐震化
 尾鷲小学校・尾鷲幼稚園の耐震化は、7号補正で前倒しして7億7538万2千円、輪内中学校においては、基本計画及び基本設計に着手して1760万円と報告。7号補正分については、設計段階で金額が大幅上昇した経緯など、議論が予想されます。
 財政状況などみても、どこからお金が沸いてくるのか不思議ですが、お金をかけるのは理由があるからで、であるならば、学校統廃合をもう一度検証していいのではと感じます。

 ・2件分の合計 7億9298万2千円

16.第2屋内運動場(武道場)の建設
 武道場の建設についても、大幅に予算がアップ、どこかに打ち出の小槌があるのでしょうか?

 ・7号補正 1億2417万4千円

17.地域連携協力協定
 名前がたいそうですが、三重大学との連携です。三重大学が、地域との連携を深めたいのには理由があります。良し悪しでは図れませんが、三重大学に委託される予算の総額は、けっこうになると予測できます。一度、調査してみる価値がありそうです。

18.天然記念物指定
 須賀利大池地区の天然記念物指定

19.高速道路
 なけなしの予算で整備されているのに、こんな後段にかいつまんででるだけでよいのでしょうか?以前には、民主党の馬淵澄夫衆議院議員が苦言を呈した整備でもあったので、議会としても反論したところであります。尾鷲北インターチェンジの工事に際しては、近隣住民のみならず迷惑もかかっており、いくら市の事業ではないにせよ、高速道路が今後の市に与える影響を勘案しても、もう少し取りざたされてよいのではと感じました。
 また、漏れ聞こえてくる話題も多い道の駅については、さらりと流す程度で終わりました。

20.大曽根コミュニティセンター建設事業
 先ごろ、近くまでいってのぞいてきました。まもなく完成するので、大曽根地区にとっては待ちわびたことと察します。

 以上が、本定例会における岩田市長の所信表明でした。

 後半は、独自の事業を報告するのではなく、消化的に主な事業を紹介したと言った印象でした。このあとに、提案説明をおこなったのですが、かなりの時間を費やしました。

 いずれにしろ、岩田色が出た施策もあるので、尾鷲市がどのように変化していくのかにも期待しております。
by owase874 | 2011-03-02 00:21 | 定例会の報告


市民活動の延長線上に、市民目線の政治があると考えています。


by kumano874

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当ブログに来ていただきありがとうございます。私が政治に関心をもったのは、災害現場でボランティアとして活動しているときに、どうしても市民活動・NPO活動だけでは届かない声があると感じてからです。1995年の、阪神淡路大震災のときです。それ以降、政策提言できる市民活動を合言葉に、さまざまなことを実践しています(市民派向けのブログもあります。こちらCafe_CReAM モノ語り)。


これまでの思いが実現したのが、2006年11月から、2期6年半在職した尾鷲市議会議員でした。3期目の挑戦には苦杯しましたが、貴重な実体験をさせていただき、条例の制定を中心にした議会改革や、市民活動で培った政策提言を直接できる立場として、負託の重さを実感することができました。

また、尾鷲市議として負託をいただいてからは、この地域ではいち早く、議員活動をお知らせする手段の一つとして、このブログを活用しました。当時のことも含め、日々私が何を感じ、何を考えているかを綴る活動報告にもなっています。なお、2014年5月1日からは、三重県熊野市議会議員として、あらたな1歩を踏み出します。

ときには辛口の意見もありますが、東紀州における公益や市民益を考える一人の意見として読んでいただければ幸いです。

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