公共施設のあるべき姿~津波を想定して~

 予算決算常任委員会の審査が11日から始まりました。

 折しも、東日本大震災から2年が経過し、地震発生時間の14時46分には、広域行政放送のサイレンにしたがって、委員会を中断して黙祷しました。思い起こせば、2年前のこの時間も、私はこの席にいて、生活文教常任委員会の審査をしていたときでした。

 ちょうど、尾鷲小学校の耐震改修工事の審査中で、私は、「小学校は地震対策ができているのか?」との質問を市長にしているときでした。この頃は、学校の津波対策は二の次で、私は想定内をよしとせず、尾鷲小学校も危険地域だと訴え続けていました。結果としては、なんの考慮もされずに、耐震改修工事がはじまってしまい、私は関連するほとんどの議案に反対をすることになりました。尾鷲小学校の校庭は海抜7メートルほどで、新築される校舎については、津波対策はされないままの設計となりました。あの頃、訴える私は失笑をかっていましたが、いまでは誰もが懸念する事態となっています。

 その後の尾鷲小学校は、いまの校舎を見ても明らかですが、やはり、津波対策を考慮した設計にすべきでした。幸いにして、尾鷲小学校の学校防災教育では、いち早く逃げることを重点において訓練されるようになりましたが、東日本大震災後に想定された南海トラフの地震と津波では、校舎が津波で被災する可能性が一段と大きくなっています。新校舎よりもさらに低い位置にある体育館もですが、公共施設が津波の被害を受けるということは、その後の復興にも大きく影響します。もっと言えば、発災直後から外部支援が始まる数日間、公共施設が使えないのは大きな痛手です。尾鷲市街には、避難者を収容する建物自体が少ないため、生き延びた人が、さらに過酷な数日間を過ごす可能性が大きいのです。それは、まさに生死を分けてしまうのです。

 それと同等のことが、各地域でも起こりうる想定のなか、公共施設のあり方が、東日本大震災後には大きくクローズアップされています。私自身も、個人的にも支援をしている岩手県下閉伊郡山田町を視察したとき、「ここだけは見ておいてほしい」と、ある集落を案内されました。その集落は、津波で壊滅し、公共施設の公民館に避難した全員が、建物ごと津波に流された場所でした。確か、高台の自宅に避難していた人だけが、生き残ったということでした。同じ高台にいた住民が、そこより低い公民館に身を寄せたために、被害を受けたとの話は痛ましい限りでした。警察関係者が遺体の捜索をしているなかでしたが、公民館の跡地は6-10メートル近くあったと記憶しています。そこまで津波が押し寄せるとは、まさに想定外のことが起こったのです。

 特筆すべきことは、公民館という公共施設に、住民が身を寄せたことです。それが、集落ごとなくなってしまう結果を招くとは、誰も想像だにしなかったことでしょう。しかし、こうして実際に起った現場に立ったとき、「公共施設は津波の想定区域にあってはだめだ」と、心底感じたのです。また、山田町を視察したとき、防災センターと書かれた公共施設が、津波で激しく被災していたのも見かけました。これでは、防災はなんのためにあるのかと、自問自答したものです。だから、私は、尾鷲市が進めようとする公共施設の建設には、津波対策を訴え続けるのが使命だと、強く信念を持っているのです。

 しかしながら、どうしても津波想定域に設置しなければならないことも起こります。尾鷲市においては、輪内中学校が筆頭でしたが、ここは予定を変更して嵩上げし、しかも2階から避難路となる高台に逃げられる通路も設置しました。また、校舎自体も堅牢にし、津波を受けても倒壊しない、その後の機能回復も見越した設計に変更されて進められています。同じく、宮之上小学校においても、詳しい内容は聞けずじまいですが、津波対策は万全を期しているとのことです。また、宮之上小学校は、北川沿いにあり、校庭の海抜は7メートル半です。ここについても、以前より津波の被災の可能性を訴えていましたが、当時の学校関係者からは非難を浴び、抗議を受けたこともありました。いまとなっては、懐かしい記憶ですが、東日本大震災を教訓にするということは、このように実践的に対応していくことだと感じています。

 ただ、そうはならない公共施設も、この尾鷲市にはあります。

 地域住民の意向ということで、津波想定区域に、2階建ての木造を主体としたコミュニティセンターの建設が進められています。ここでの想定は10メートル以上、2階建ての屋根までは10メートルそこそこです。構造が木造主体になったのは、補助金の出る条件が、木を使う構造であることでした。当時の担当課からの説明では、東日本大震災前の補助決定であり、その後も問題なく助成されるに至っているとのことでした。地域住民についても、「津波の際は、ここには逃げない。高台避難する。しかし、日常的に住民が集まれるこの場所に、コミュニティセンターがほしい」との意向でした。それだけで、市長も建設にGOサインを出したのでした。最終的に予算を認めたのは、議会も然りです。

 非常に難しい問題だと感じています。なにも、尾鷲市に限ったことではなく、東日本大震災後の東北地方沿岸部でも、似たような憤りと現実が課題にもなっています。私は、この件で激しく反論しているために、この地域住民からは敬遠されています。当時と同じく、辛辣に非難もされています。いち議員として、それは受け止めるしか無いのだけど、あの惨状をこの目で見た来た以上は、公共施設のあり方を訴え続けなければと感じるのです。津波の被害を受けることを承知しながら、地区唯一の公共施設をあの場所に設置するには、どうしても憤りがあるのです。

 この地区は、70%を超える高齢化が進み、すでに161名(97世帯)ほどの人口になっています。それだけに、日常的な利便性を取ったことも理解はできるのですが、地区より当初に要望されていた小学校跡地に、建設が進んでいる公共施設があったならばと、いまでも考えることがあります。歩くには遠い高台ですが、ある程度の敷地面積があり、被災を受けても地区住民が寄り添える公共施設になったことでしょう。そのために、当時の仮設橋を強固にし、車が入れるように整備をしてきたことも、いまでは忘れられてしまっています。もう元には戻りませんし、想定が想定に留まることを祈るばかりですが、この一件により、現市長の防災に対する見方に落胆したのは言うまでもありません。

■早田コミュニティセンター建設工事について(公告)
 http://www.city.owase.lg.jp/contents_detail.php?frmId=8451

 余談ですが、建設費は7千万円を超えています。新規のコミュニティセンターがこの価格ということで、他にも整備を待っている地区にとっては、「(建設が)後回しになったこともあるし、同等の投資をして然りだろう」との声も聞きます。現市長の説明では、「津波の対策を今後は万全にする」とのことですが、コミュニティセンターの在り方自体も、同様に問うていかなければと考えています。

 さらに余談ですが、これまでのやり取りのなかで、この地区の在住であることを、実名を名乗って連絡をくれた方がいました。その方は、「地区が一眼となっているから、はばかって言えないが、せめて孫がいる××(地区名)の××(公共施設名)だけは、津波の被害に合わないように考えてほしい。それだけは、叶えたって欲しい」とのことでした。やはり、私という存在がやらなければならない使命が、ここにあるのだと感じた出来事でした。小さく少ないとはいえ、声なき声を訴えていくことが、これまでの、これからの、私の役割であると考えています。
by owase874 | 2013-03-13 02:43 | 防災とまちづくり


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当ブログに来ていただきありがとうございます。私が政治に関心をもったのは、災害現場でボランティアとして活動しているときに、どうしても市民活動・NPO活動だけでは届かない声があると感じてからです。1995年の、阪神淡路大震災のときです。それ以降、政策提言できる市民活動を合言葉に、さまざまなことを実践しています(市民派向けのブログもあります。こちらCafe_CReAM モノ語り)。


これまでの思いが実現したのが、2006年11月から、2期6年半在職した尾鷲市議会議員でした。3期目の挑戦には苦杯しましたが、貴重な実体験をさせていただき、条例の制定を中心にした議会改革や、市民活動で培った政策提言を直接できる立場として、負託の重さを実感することができました。

また、尾鷲市議として負託をいただいてからは、この地域ではいち早く、議員活動をお知らせする手段の一つとして、このブログを活用しました。当時のことも含め、日々私が何を感じ、何を考えているかを綴る活動報告にもなっています。なお、2014年5月1日からは、三重県熊野市議会議員として、あらたな1歩を踏み出します。

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